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大阪地方裁判所 平成4年(ワ)6412号 判決

大阪府堺市〈以下省略〉

原告

X1

右訴訟代理人弁護士

関根幹雄

伴純之介

大阪府大阪狭山市〈以下省略〉

原告

X2

右訴訟代理人弁護士

渡邊亘男

東京都中央区〈以下省略〉

野村證券株式会社

右代表者代表取締役

右訴訟代理人弁護士

辰野久夫

右訴訟復代理人弁護士

尾崎雅俊

主文

一  原告らの請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実及び理由

第一請求

一  被告は、原告X1に対し、二一七二万二三〇三円及びこれに対する平成三年四月五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告は、原告X2に対し、八八一万九六〇〇円及び内金八〇一万九六〇〇円に対する平成元年二月一一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、証券業を営む被告とワラント取引をした原告らが、被告の被用者の勧誘に関する説明義務違反等の違法な行為により損害を被ったとして、被告に対し、民法七一五条に基づき、原告X1(以下「原告X1」という。)は実損金合計一九七五万二三〇三円及び弁護士費用一九七万円の合計二一七二万二三〇三円並びにこれに対する不法行為後である平成三年四月五日以降の遅延損害金、原告X2(以下「原告X2」という。)は実損金八〇一万九六〇〇円及び弁護士費用八〇万円の合計八八一万九六〇〇円並びに右実損額に対する平成元年二月一一日以降の遅延損害金の支払を、それぞれ求めた事案である。

一  争いのない事実

1  原告X1関係

(一) 原告X1は、段ボール製造用機械の製作、販売を目的とする会社の経営者であり、被告は、証券業を営む株式会社である。

(二)(1) 原告X1は、昭和六〇年ころから被告天王寺駅支店と株の現物取引を行ってきたものであるが、平成元年六月同支店の担当者であったB(以下「B」という。)から大和ハウス工業のワラント取引を勧められ、同月五日、右ワラントを約一〇五二万円で購入した。

(2) 原告X1は、平成元年七月二一日、右ワラントを売却したが、同日付けで岩谷産業のワラントを購入し、同月二六日にこれを売却した。

(3) 原告X1は、平成元年八月四日、ダイセル化学のワラントを購入し、同年一二月八日にこれを売却した。

(4) 原告X1は、平成元年一二月一八日、丸井のワラント七〇単位を金一四一四万六三〇〇円で購入した。

(5) 被告は、原告X1に対し、平成二年二月ころ、「外貨建ワラント時価評価のお知らせ」と題する書面を送付した。

(6) 原告X1は、平成三年四月五日、被告従業員C(以下「C」という。)の勧誘により、ユニデン、日本石油、三菱金属、東京海上、三菱油化、伊藤忠商事、丸井、京王電鉄、キリンビール、三菱重工のワラントを各一〇単位、合計五六〇万六〇〇三円で購入した。

(7) 原告X1は、(4)及び(6)の各ワラントを処分せず現在に至っている。

2  原告X2関係

(一) 原告X2は、a株式会社(以下「a社」という。)の代表取締役であり、被告は、証券業を営む株式会社である。

(二)(1) 原告X2は、昭和六三年六月ころ、被告堺支店のD(以下「D」という。)に三井銀行の新規発行転換社債の購入を勧誘され、これに応じて右転換社債を購入したのを始まりとして、Dの勧誘に応じて転換社債を購入していた。

(2) 原告X2は、Dに対し、昭和六三年一一月、新規上場の三菱自動車の株式の購入を委託して、株式の現物取引を始め、平成元年一月に近畿日本鉄道の株式を購入してからは、株式市場に上場されている株式の取引を始めた。

(3) 原告X2は、平成元年二月七日ころ、Dの勧誘により、行使期限平成四年七月一四日の新日本製鉄ワラント三〇単位を代金八〇一万九六〇〇円で購入した。

(4) 被告担当者は、平成四年四月、a社の事務所を訪問し、原告X2に対し、「外貨建時価評価のお知らせ」を示して、新日鉄ワラントの現在値が約二〇〇〇円である旨告知し、承諾書への署名押印を求めたが、原告はこれを拒否した。

被告担当者は、同年七月ころにも、a社の事務所や原告X2の入院中の病院を訪問した。

二  争点

1  原告X1関係

(一) 説明義務違反

(1) 原告

ワラントは、極めてハイリスクな投資商品であり、しかも権利行使期間が過ぎると無価値になるという特殊性があり、我が国においてはなじみがなく、よく知られていなかったのであるから、被告は、原告X1に対し、その仕組みと危険性について十分説明をした上で勧誘し、その納得のもとで取引をする義務があるのにもかかわらず、被告従業員Bは、原告X1に対し、ワラントの危険性や仕組みについて具体的な説明をせずに、転換社債のような債券と思い込ませ、「短期間でかなり利益を得られる」等述べてその旨信用させ、前記各ワラントの取引を開始させ、取引を継続させた。

(2) 被告

Bは、平成元年三月ころ、原告X1の経営する会社の事務所を訪問し、ワラント取引に関する説明書を交付し、これを示しながら、ワラントは新株引受権付社債の新株引受権の部分が分離されたものであり、一定の期間内に一定の価格で一定数量の株式を引き受ける権利であること、株価に連動して株価より大きな値動きをするハイリスクハイリターンの商品であること、権利行使期間を経過すると権利が消滅し、無価値になること、価格はドル建てで、ポイントで表示されること、被告に問い合わせてもらえれば価格が分かること等を十分説明しており、原告X1は、ワラントについて十分理解した上、自由な意思と判断により前記各ワラント取引を行った。

(二) 断定的判断の提供

(1) 原告

被告担当者は、原告X1に対し、「短期間で必ずかなりの利益が得られる」とか、「自分が責任を持つ。損はさせない」などと断定的判断を示してその旨信用させ、原告に取引をさせた。

(2) 被告

原告X1は、証券会社からの勧誘なしに、自分の方から取引を申し込むこと(以下「客注」という。)が多く、勧誘を受けた場合も自己の判断に沿わない場合は断っており、自己の判断に基づき取引を決定していたのであって、被告担当者は、原告X1に助言したにすぎず、断定的判断を提供したことはない。

(三) 虚偽表示・誤導表示の使用

(1) 原告

被告担当者は、原告X1に対し、ワラントは「社債と同じものである」とか「今日買わねば明日はなくなる」、「会社が特選した銘柄ばかり集めたものである」などと述べて、取引を勧誘した。

(2) 被告

否認する。

(四) 強引で執拗な勧誘

(1) 原告

証券会社が強引で執拗な勧誘をなすことは、顧客の自由な意思決定を阻害し、取引の公正を害するので、違法であるのにかかわらず、被告担当者は、原告X1に対し、「損を取り戻すにはこれしかない」とか「自分が責任を持つから損はさせない」などと述べて、強引かつ執拗に取引を勧誘した。

(2) 被告

否認する。

(五) 損害

(1) 原告

原告X1は、被告従業員の不法行為により、本件ワラントを購入させられたのであって、ワラントが極めて危険性の高い証券であることについて説明を受けていれば、ワラントを購入することはなかったのであるから、購入代金を支払った時点で購入代金全額の損害を被ったものであり、次のとおりの損害を被っている。

① 丸井ワラントの代金相当額 一四一四万六三〇〇円

② ユニデン、日本石油、三菱金属、東京海上、三菱油化、伊藤忠商事、丸井、京王電鉄、キリンビール、三菱重工ワラントの代金相当額 五六〇万六〇〇三円

合計一九七五万二三〇三円

③ 弁護士費用 一九七万円

合計二一七二万二三〇三円

(2) 被告

争う。

2  原告X2関係

(一) 説明義務違反

(1) 原告

ワラントは、極めてハイリスクな投資商品であり、しかも権利行使期間が過ぎると無価値になるという特殊性があり、我が国においてはなじみがなく、よく知られていなかったのであるから、証券会社には、ワラントは行使期限経過後は無価値になる等の基本的事項の告知説明義務があるのにかかわらず、被告従業員Dは、原告X2に対し、本件ワラント取引に際し、原告X2がワラントの危険性を的確に理解できる説明をせず、また原告X2が説明を求めても説明しないまま、取引を勧誘した。

(2) 被告

被告担当者は、本件取引に先立ち、ワラントに関する説明を十分しており、原告X2は、ワラントについて十分理解した上、自由な意思と判断により本件ワラント取引を行った。

(二) 断定的判断の提供

(1) 原告

被告従業員Dは、原告X2に対し、「確実、儲かります。」などと断定的判断を示して取引を勧誘した。

(2) 被告

否認する。

(三) 虚偽表示・誤導表示の使用

(1) 原告

被告従業員Dは、原告X2に対し、「必ず、儲かります」、「株式のようなものです。」などと述べて、原告X2を勧誘した。

(2) 被告

否認する。

(四) 強引で執拗な勧誘

(1) 原告

証券会社が強引で執拗な勧誘をなすことは、顧客の自由な意思決定を阻害し、取引の公正を害するので、違法であるのにかかわらず、被告従業員Dは、原告X2に対し、強引かつ執拗に取引を勧誘した。

(2) 被告

原告X2は、Dの勧誘に直ちに応じており、強引かつ執拗な勧誘がなされた事実はない。また、原告X2は、客注をすることもあり、自由な意思決定により取引をしていたのであって、被告担当者らが原告X2の自由な意思決定を害したことはない。

(五) 損害

(1) 原告

原告X2は、被告担当者の不法行為により、本件ワラントを購入させられたのであって、次のとおりの損害を被っている。

① 新日本製鉄ワラント 八〇一万九六〇〇円

② 弁護士費用 八〇万円

合計八八一万九六〇〇円

(2) 被告

争う。

第三争点に対する判断

一  原告X1関係

1  取引の経緯

前記争いのない事実、証拠(甲A第一ないし第六号証、乙第一号証、乙A第一ないし第三号証、第四号証の一、二、第五号証の一ないし八、第六号証の一ないし六、第七号証、第八号証の一ないし七、第九号証の一ないし六、第一〇号証、第一一号証の一、二、第一二号証の一、二、第一三号証、証人B、同C、同E、原告X1本人)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

(一) 原告X1(大正一五年○月○日生)は、平成元年六月当時六三歳の男性であり、段ボール製造用機械部品の製作・販売を目的とする株式会社b(以下「b社」という。)の代表取締役であった。b社の従事者は、原告X1、その妻であるE(昭和四年○月○日生。以下「E」という。)も含め六名の規模で、売上額は年間約六〇〇〇万円であった。

原告X1は、昭和五一年ころから被告大阪支店と、昭和五九年一二月からは、被告天王寺駅支店と、投資残高二〇〇〇万円程度の規模の株式現物取引を行い、以後、同支店と、別紙売買取引計算書一記載のとおりの取引をした。

原告X1の取引形態は、短期売買が主で、客注が多く、被告担当者の勧誘を断ることもあり、全体として利益を上げていた。

(二) 昭和六一年当時、被告天王寺駅支店投資相談課員であったBは、同年二月、原告X1の担当を引き継ぎ、原告X1に対し、投資信託や債券取引を何度か勧誘したが、原告X1は、これを断り、株式の現物取引を委託していた。

Bは、平成元年ころ、b社の事務所を訪問した際、原告X1に対し、取引にかかる株式に関する話をしたほか、ワラント取引について説明した。

(三) Bは、平成元年六月五日、原告に電話して、住宅会社は業績がよいとして、外貨建新規発行ワラントである大和ハウス工業ワラント五〇〇〇ドル(第二回)の購入を勧誘した。

原告X1は、Bに詳しい説明を求め、ワラントの価格は株価に連動して変動するから、株価を見ていてくれれば、こちらからワラント価格を連絡すると聞き、同日、右ワラント八〇単位を購入することにした。

Bが、原告X1に対し、右ワラント取引には、ワラント取引に関する確認書及び外国証券取引口座設定承諾書に対する署名・押印が必要である旨伝え、これを取りに行くと述べたところ、原告X1は、Eが同月八日にc病院に行くからその際持って行かせると述べた。

原告X1は、同月七日ころ、被告からワラント取引についての詳細な説明が記載されたワラント取引説明書、外国証券取引口座設定約諾書及び取引明細書の送付を受けた。Eは、同月八日、原告X1の委託を受けて、同人の印鑑を持って被告天王寺駅支店を訪問し、外国証券取引口座設定約諾書及び右ワラント取引説明書の末尾に添付されている「貴社から受領したワラント取引に関する説明書の内容を確認し、私の判断と責任においてワラント取引を行います。」と記載されたワラント取引に関する確認書に、原告X1の住所及び氏名を記入して押印し、被告に交付するとともに、ワラントの行使期限が記載された預り証を受け取った。

原告X1は、被告に対し、同月一六日、購入代金一〇五二万六一四六円及び外国証券取引口座管理料金三〇九〇円を送金した。

(四) Bは、平成元年七月二一日、原告X1に電話して、環境関連の会社で業績がいいとして、外貨建ワラントである岩谷産業ワラント(第二回)の購入を勧誘した。

原告は、これに応じ、大和ハウス工業ワラントの利益が出ているからこれを売却して購入代金に充てることにし、同日、大和ハウス工業ワラントを売却し、岩谷産業ワラント七〇単位を購入した。右売却による利益は、四〇万四三二七円であった。

Bは、原告X1に対し、五日後の同月二六日、岩谷産業ワラントが短期間で値上がりしている旨伝え、その売却を勧めた。

原告X1は、これに応じ、右ワラントを売却し、右売却により、四五万六〇七七円の利益を得た。

(五) Bは、平成元年八月四日、原告X1に電話して、エアバックの新規開発を進めているので価格の高騰が見込まれると述べて、外貨建ワラントであるダイセル化学ワラント五〇〇〇ドル(第三回)の購入を勧誘した。

原告は、これに応じ、同日、右ワラント八八単位を購入した。

原告X1は、その後、行使期限が記載された右ワラントの預り証を受け取った。

(六) 被告天王寺駅支店営業課員Cは、平成元年一一月下旬、Bから原告の担当を引き継ぎ、Bとともに原告X1に電話して引継ぎのあいさつをした。その際、原告X1は、取引の精算はEを通じて行う、専務のFに被告との取引を知られたくないので、b社の事務所に電話をした際、Fが電話に出たら直ぐに切ってほしい、原告X1が電話に出ても、Fがそばにいるときは一旦切ってかけ直す旨申し入れた。

原告X1は、同年一二月八日、Cから、ドイツ銀行株の購入を勧誘され、これに応じ、右株式を購入するため、ダイセル化学ワラントを売却した。右売却による利益は、一〇九万〇六八〇円であった。

(七) Cは、平成元年一二月一八日、原告X1に電話し、「丸井は連続して好成績を挙げており、これまで四店舗であったところを川崎にもう一店舗新築中であるから、現在三四〇〇円の単価であるが、五〇〇〇円はほど近い」と述べて、外貨建ワラントである丸井ワラントの購入を勧誘した。

原告X1は、これに応じ、その購入代金に充てるため、ドイツ銀行株を売却し、丸井ワラント五〇〇〇ドル(第一回)七〇単位を、単価二八ポイント、代金合計一四一四万六三〇〇円で購入した。

原告X1は、その後、行使期限を記載した右ワラントの預り証の交付を受けた。

(八) 当時、我が国において、外貨建ワラントの取引市場は形成されておらず、顧客は日々のワラント価格を知るために証券会社に問い合わせをする必要があったところ、被告は、顧客に対し、平成二年二月以降、約三か月毎に、「外貨建ワラント時価評価のお知らせ」を送付するようになった。また、遅くとも平成元年一〇月からは、外貨建ワラントの店頭気配価格が、日本経済新聞に掲載されるようになった。なお、右「外貨建ワラント時価評価のお知らせ」の裏面には、ワラント証券の定義や理論価格などの価格決定要因の計算式に加えて、「場合によっては投資金額の全額を失うこともあります。」、「(権利行使)期間内に売却もしない、権利行使もしない場合ワラント買付代金全額を失うことになります。」と記載されている。

(九) 原告X1は、平成二年三月始め、「外貨建ワラント時価評価のお知らせ」を受け取って開封し、丸井ワラントに五八一万三五〇〇円の時価評価損が出ていることを知り、裏面の説明を見てワラントの価格を計算しようとしたが、計算方法が分からなかったので、被告天王寺駅支店に電話して、電話に出たG(以下「G」という。)に計算方法を問い合わせた。Gが原告X1に対し右説明をした上、ワラント説明書を送付するのでこれを読んでほしいと述べて右説明書を送付してきたので、原告X1は、これを読んでワラント価格を計算しようとしたが分からず、Cに電話して説明を求めたが、有効な対応策もなく、そのまま放置した。

(一〇) その後、平成二年七月から平成三年一月まで、湾岸戦争の影響で相場が下落し、原告X1の株式取引は中断されていたところ、平成三年四月五日、原告X1がCに対し、日本ルツボ株式の売却を委託した際、Cは、相場がいずれ上昇に転じると思われるから、丸井ワラントの難平という意味で、各業種の代表的な会社のワラントのうち、行使期間が二年以上で、価格が一〇ポイント以下のものを一〇銘柄購入してはどうかと述べて、いずれも外貨建ワラントである麒麟麦酒(第二回)、三菱重工業(第四回)、伊藤忠商事(第五回)、三菱油化(第四回)、東京海上火災(第一回)、三菱マテリアル(第五回)、京王帝都電鉄(第二回)、丸井(第一回)、日本石油(第三回)、ユニデン(第一回)の各ワラント各一〇単位の購入を勧誘した。

原告X1は、これに対し、既に購入して値下がりしている丸井ワラントをさらに買い増すことにちゅうちょし、「ワラントは紙屑になるのでしょう。」などと述べたが、Cの「その危険はあるが、相場全体が戻り始めたときに投資効率としては高いのではないか。」との勧めを聞き、右各ワラントを各一〇単位、代金合計五六〇万六〇〇三円で購入した。

その後、原告X1は、右各ワラントについて、「新株引受権の権利行使期限を過ぎますと、証券は無価値となり消却されます」と記載された預り証を受け取った。

(一一) Cは、その後も原告X1から株式の現物売買の委託を受けていたが、平成三年五月転勤することになったため、同月一七日、後任のH(以下「H」という。)とともに、原告X1の自宅を訪問し、引継ぎのあいさつをして、証券取引の残高を確認する旨の承認書に署名・押印をするよう求めた。

原告X1は、Eに右書面に自己の名義で記名・押印させて、被告に交付した。

(一二) 原告X1は、平成三年六月二四日、Hの勧誘により、富士通国内ワラント二単位を購入した。

その後、Hは、数回原告X1と電話して、相場状況の説明等をしていたが、電話の取次ぎをしてもらえなくなった。Hは、同年一二月、一度原告X1と電話で話し、ワラントの時価評価の確認書の交付を求めるなどしたものの、その後は再度電話の取次ぎをしてもらえなくなった。

Eは、平成四年四月、Hに電話して、株券等を取りに行くので用意しておくようにと指示した上、同月九日、息子とともに被告天王寺駅支店を訪問し、預託していた全株券及び国内ワラント証券の返却を受けた。その際、Eは、被告に対し、原告X1名義のレインボーファンドの売却及びその残金の振り込みを指示した上、ワラントについては今後Eらが指示するので、原告X1には連絡をしないようにと申し入れた。

その後、被告天王寺駅支店は、原告X1名義の取引の委託を受けていない。

2  判断

(一) 説明義務違反について

(1) 原告X1は、Bがワラントの危険性や仕組みについて具体的説明をせずに転換社債のような債券と思い込ませた等と主張し、甲A第四号証、第六号証、証人Eの証言及び原告X1本人尋問の結果中には、事前にBの訪問を受け、ワラント取引説明書の交付を受け、具体的な説明を受けたことはなく、大和ハウス工業ワラントの勧誘を受けた際、電話で「大和ハウスが新規に社債を発行する。短期間で必ずかなり利益が得られる。売る時期は私が指導し、私が全部アドバイスをするので任せてください。」と言われ、転換社債のような債券であって、短期間でかなり利益を得られる旨思いこまされて取引した旨の部分がある。

しかしながら、右各証拠において、Bがb社の事務所を一度訪問したこと自体は否定されておらず、原告X1がBと会わず、ワラントの話を聞いていなかったとするのみであり、また、原告X1の平成元年六月五日のワラント取引についての主尋問における前記趣旨の供述は、反対尋問で覆されており、右各証拠の右趣旨の部分は採用できない。

もっとも、乙A第七号証及び証人Bの証言中、Bが、平成元年三月ころ、b社の事務所を訪問し、原告X1に対し、ワラント取引説明書及びワラントの価格及び株価の連動をグラフ化したチャートを示して説明したとの部分は採用できず、また、その際及び同年六年五日、前記被告主張のとおりワラントの特徴点を具体的に説明したとの部分は、余りにも整いすぎた証言であって、数年前の単なる一勧誘事例についてそのように明確な記憶があること自体疑問がないわけではなく、直ちに採用し得るか問題なしとしない。

(2) しかしながら、原告X1は、大正一五年生まれの男性であり、代表取締役として、年商約六〇〇〇万円、六名の規模の株式会社を経営し、ワラント取引を開始する以前に投資残高約二〇〇〇万円の規模で一〇年以上株式の現物売買を継続し、その取引態様も、多くは短期の保有で売却し、さらにその代金で別の商品を購入して譲渡益の取得を目指すというもので、株式取引の多くが客注であり、証券会社の勧誘を断ることもあり、全体として株式取引においては相当の利益を得てきたこと等の事情を勘案すれば、原告X1は、既に投資家として十分な経験、知識及び判断能力を有していたものといえる。

そうすると、右のような投資経験、投資実績、投資態度を示す原告X1が、勧誘されて初めてする大和ハウス工業ワラント購入について、相当慎重かつ入念な対応をしたであろうことが窺われるのであって、原告X1が大和ハウス工業ワラント購入に踏み切ったことを考慮すると、被告主張のとおりBがワラントの特徴点を具体的に説明したから原告X1が納得して購入したともいえるのであって、これに沿う乙A第七号証及び証人Bの証言部分を全部事実と異なるものと断定することもできない。

結局、前記認定のとおり、大和ハウス工業ワラントの取引前に、ワラント取引についての説明がなされたが、具体的にどのような説明がなされたかは証拠上必ずしも明らかでなく、右段階で説明義務違反に該当する事実があったとする原告X1の主張事実は、これを認めるに足りる的確な証拠がないというほかない。

そして、原告X1が、右大和ハウス工業ワラント購入直後、ワラント取引について詳細な説明のされたワラント取引説明書を受領し、その内容を確認して自己の判断と責任においてワラント取引を行う旨記載した確認書を提出し、その後数回ワラントを購入する都度、権利行使期限を明記した預り証を受領し、平成二年二月以降約三か月毎に購入代金全額を失うことがある等の記載がある「外貨建ワラント時価評価のお知らせ」という書面を受領していたことを考えると、少なくとも、平成元年一二月の丸井ワラント及び平成三年四月の一〇銘柄のワラントの各購入の際には、ワラント取引の何たるかを認識・理解していた可能性がないではないといえる。

そうすると、原告が損害を受けたとして請求している平成元年一二月の丸井ワラント及び平成三年四月の一〇銘柄のワラントの各購入の段階で、説明義務違反の事実があったとは直ちにいえない。

(3) したがって、説明義務違反の主張は認められない。

(二) 断定的判断の提供について

原告X1は、被告担当者が、「短期間で必ずかなりの利益が得られる」とか、「自分が責任を持つ。損はさせない」などと述べたと主張し、甲A第四号証及び原告X1本人尋問の結果中には、これに沿う部分がある。

しかしながら、実際、そのとおりの発言があったか否か、直ちに右供述中の文言どおりには受け取れない上、仮にこれに近い勧誘文言があったとしても、原告の証券取引についての投資経験、投資実績及び投資態度に照らせば、これを盲信したとは考えられず、これにより原告X1の自由かつ主体的な意思決定が阻害されたとは認められない。

したがって、違法な断定的判断の提供があったとの主張は認められない。

(三) 虚偽表示・誤導表示の使用について

原告X1は、被告担当者らが、ワラントは「社債と同じものである」、「今日買わねば明日はなくなる」、「会社が特選した銘柄ばかり集めたものである」等と述べたと主張し、甲A第四号証及び原告X1本人尋問の結果中にはこれに沿う部分があるが、証人B及び同Cの各証言に照らし、直ちには採用できない。

したがって、虚偽表示・誤導表示の使用があったとの主張は認められない。

(四) 強引で執拗な勧誘について

原告X1は、被告担当者が「損を取り戻すにはこれしかない」とか「自分が責任を持つから損はさせない」などと述べて、強引かつ執拗に取引を勧誘したと主張し、甲A第四号証及び原告X1本人尋問の結果中には、これに沿う部分があるが、証人B及び同Cの各証言に照らし、直ちには採用できない。

したがって、強引で執拗な勧誘があったとの主張は認められない。

二  原告X2関係

1  取引の経緯

前記争いのない事実、証拠(甲B第一ないし第三号証、第五号証の一ないし三〇、乙第一号証、乙B第一ないし第四号証、第五号証の一、二、第六号証の一、二、第七号証、第八号証の一ないし九、第九号証、第一〇号証、第一一号証の一、二、第一二号証、第一三号証の一ないし一八、第一四号証の一ないし三、第一五号証の一ないし六、証人D、同I、原告X2本人)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

(一) 原告X2(大正一五年○月○日生)は、平成元年二月当時六三歳の男性であり、昭和三五年ころ設立したa社の経営者として、従業員約一五名、年商約七ないし八〇〇〇万円の規模で塗装プラント工場を経営していたが、右工場を昭和四五年ころ約一億円で売却してからは、工場経営を止め、右代金を、年商五ないし六〇〇万円の規模で建売住宅事業に投資したり、銀行預金として運用したり、手形割引をするなどして収入を得ていた。

原告X2は、昭和六〇年ころ、加入していたライオンズクラブのメンバーから株式取引を勧められ、コスモ証券株式会社堺支店と株式の取引をするようになり、月数回、同社担当者の訪問を受けていた。

原告X2の被告堺支店との取引の経過は、別紙売買取引計算書二記載のとおりである。

(二)(1) 原告X2は、昭和六三年五月ころ、被告堺支店に電話し、応対に出た被告堺支店投資相談課員Dに対し、抵当証券についての説明を求めた。Dは、原告X2に対し、抵当証券の説明をした上、後日金融商品のパンフレット類を郵送することを約した。

その後、Dは、原告X2に数回電話したり、a社の事務所の住所、電話番号を聞き出して数回訪問するなどして、抵当証券や投資信託等の勧誘をしていたが、原告X2がDの説明を聞いて、転換社債の購入に意欲を示したため、三井銀行(後のさくら銀行)の新規発行転換社債の購入を勧誘した。

原告X2は、同年六月一六日、これに応じ、被告に対し、右転換社債の購入を委託した。

(2) 原告は、被告に対し、昭和六三年一一月一五日には、「他社で勧められたから、被告でも購入したい。」として、三菱自動車株式会社の新規公開株の購入を委託し、以後株式の現物取引を始めた。

(3) Dは、これらの取引の代金及び預り証等の受渡しのために、a社の事務所を訪問していたが、原告X2が、昭和六三年一二月五日、同年一一月一五日に購入した三菱自動車株式の売却により利益を上げ、そのころ、同人の投資金額が五〇〇〇万円を超えたこともあり、平成元年一月ころ、信用取引の説明をして、勧誘した。

しかし、原告X2は、信用取引においては、委託証拠金として預託した投資金額全額を上回る損失が出る可能性があること及び決済期日が長くとも半年であるということで、関心を示さなかった。

(三)(1) そこで、Dは、原告X2に対し、ワラント取引を勧誘することにし、平成元年一月下旬、ワラントは、権利行使価格によって新株を引き受ける権利であって、行使期限経過後は無価値になるが、信用取引と異なり、投資元本以上の損失がなく、損失が限定的であること等を、ワラント取引について詳細な説明のされたワラント取引説明書を示して説明し、右取引説明書を交付し、以後、数回にわたって同様の説明をして勧誘した。

(2) Dは、平成元年二月六日、原告X2を訪問し、新日鉄の株価は一月下旬に少し下がったが、その後回復してきたとして、外貨建ワラントである新日鉄ワラント(第一回)の購入を勧誘し、翌七日にも、電話して、右ワラントの購入を勧誘した。

原告X2は、これに応じ、Dの伝えた一〇ワラントごとの価格の概算を聞いて、同人に対し、右ワラント三〇単位を単価四一・〇ポイントで購入した。

(3) Dは、平成元年二月八日にも、原告X2に電話し、業績がよいとして、外貨建ワラントであるモリ工業ワラント(第一回)の購入を勧誘した。

原告X2は、これに応じ、Dから一〇単位ごとの価格の概算を聞いて、同人に対し、右ワラント六〇単位を単価二八・五ポイントで購入した。

(4) Dは、平成元年二月一〇日、a社事務所を訪問し、原告X2から、新日鉄及びモリ工業ワラントの代金を受け取り、行使期限が記載された預り証を交付した。また、原告X2は、外国証券取引口座設定約諾書及び「ワラント取引説明書の内容を確認し、私の判断と責任においてワラント取引を行います。」と記載されたワラント取引に関する確認書にその場で署名・押印し、Dに交付した。

(四)(1) 原告X2は、その後もDに対し転換社債、株式等の取引を委託していたが、平成元年三月ころ、出入りしていたコスモ証券株式会社の担当者がワラントの価格が上がっていると述べたので、Dに対し、ワラントの売却を申し出た。

しかし、原告X2は、Dが「もう少し待ちましょう。」と述べたため、それ以上の値上がりが見込めると考え、売却の申入れを撤回した。

(2) 原告X2は、平成元年五月一〇日、Dの勧誘に応じ、モリ工業ワラントを売却し、右売却により、一四一万七五八一円の利益を得た。

(五)(1) Dは、平成元年五月下旬、後任の被告堺支店投資相談課員J(以下「J」という。)とともに、原告X2を訪問し、引継ぎのあいさつをした。

(2) Jは、平成元年九月末ころ、後任の被告堺支店投資相談課員I(以下「I」という。)とともに、a社の事務所を訪問し、引継ぎのあいさつをしたが、その際、原告X2は、保有している有価証券類の評価額が下がっていることについて不満を述べた。

Iは、Jから、原告X2は会社経営者であり、取引額が大きいこと、受渡しは訪問で行い、その都度決済すること、他社とも取引があるらしいことを申し送られていた。

(3) 原告X2は、平成元年一〇月二〇日、Iに電話し、損失の概算を聞いた上、住友重機械工業株式一万五〇〇〇株の売却を委託し、右売却により、四二二万九二四五円の損失を被った。

また、原告X2は、同年一二月二一日にも、Iに電話し、損失の概算を聞いた上、大阪瓦斯株二万株及び東京電力株一五〇〇株の売却を委託し、右売却により、それぞれ一二二万三九二二円及び二三二万〇〇五三円の損失を被った。

(4) 一方、原告X2は、Iの電話での勧誘に応じて、平成元年一二月一日、凸版印刷、平成二年三月一九日、日本住宅金融の各公募増資株式の購入を委託した。Iは、他の基幹産業銘柄の株式の購入も勧誘していたが、原告X2は、右株式以外の購入を断り、その後も被告担当者の勧誘を断っていた。

(六)(1) 当時、我が国において、外貨建ワラントの取引市場は形成されておらず、顧客は日々のワラント価格を知るために証券会社に問い合わせをする必要があったところ、被告は、顧客に対し、平成二年二月以降、約三か月毎に、「外貨建ワラント時価評価のお知らせ」を送付するようになった。また、遅くとも平成元年一〇月からは、外貨建ワラントの店頭気配価格が、日本経済新聞に掲載されるようになった。なお、右「外貨建ワラント時価評価のお知らせ」の裏面には、ワラント証券の定義や理論価格などの価格決定要因の計算式に加えて、「場合によっては投資金額の全額を失うこともあります。」、「(権利行使)期間内に売却もしない、権利行使もしない場合ワラント買付代金全額を失うことになります。」と記載されている。

(2) 原告X2は、平成二年三月始めころ、送付されてきた外貨建ワラント時価評価のお知らせを見て、ワラントの価格が下がっていることを認識したが、ワラント取引についての説明が記載されている裏面を読まないまま、そのうち相場が持ち直すだろうと考え、放置した。

(3) 原告X2は、平成三年初めころにIが訪問した際、同人に対し、ワラントの価格を質問し、もうほとんど価値はないとの答えを得たが、そのまま放置した。

(七)(1) Iは、平成三年五月二〇日ころ、後任の被告堺支店投資相談課員K(以下「K」という。)とともに、a社の事務所を訪問し、引継ぎのあいさつをし、原告X2から、残高承認書に対する署名・押印を得た。その際、原告X2は、相場が値下がりした状況で仕方ないからそのまま手持ち証券を持っておくという趣旨のことを述べた。

(2) Kは、その後、原告X2を訪問した際、新日鉄ワラントの権利行使期限は平成四年七月一四日であり、その日を経過すると無価値になる旨告げた。

原告X2は、権利行使期限までに少しでも価格が上がれば、右ワラントを売却する旨述べた。

(3) 原告X2は、平成三年六月二一日、Kに電話し、凸版印刷株等の売却を委託したが、ワラントについては、値下がりが大きいのでそのままにしておくよう指示した。

(4) Kは、平成三年九月、原告X2に電話し、平成三年八月末日の時価評価額の確認書への署名・押印を求めたが、原告X2は、値下がりしているのにそんなものは書けないと拒否した。

(八)(1) Kは、平成四年四月一五日、a社の事務所を訪問し、原告X2に対し、時価評価額確認書への署名・押印を求めるとともに、新日鉄ワラントの行使期限が同年七月一四日に迫っているが、処分するかどうかを尋ねた。

原告X2は、再度右確認書への署名・押印を拒否し、右ワラントの処分については、特に指示しなかった。

(2) このため、Kが、原告X2の意向を聴取するため、同月二四日、被告堺支店投資相談課長Lとともに、a社事務所を訪問したところ、原告X2は、訴訟を提起する旨述べた。

(3) Kは、同年七月七日及び同月一三日にも、原告X2が入院中の病院を訪問し、同月一四日にワラントの行使期限が到来することを伝え、ワラントの行使期限切れに伴うワラント償還の確認書と預り証の返還を求めたが、原告X2は、右確認書への署名・押印を拒否するとともに、預り証は弁護士に預けてあり、後日弁護士から連絡がいくであろうから、そのままにしておくようにと述べた。

2  判断

(一) 説明義務違反について

前記認定のとおり、Dは、平成元年一月下旬から同年二月六日にかけて、a社の事務所を数回訪問し、原告X2に対し、ワラント取引説明書を示して説明し、原告X2は、同月一〇日には、ワラント取引に関する確認書に署名・押印して被告に差し入れ、また、取引ごとに取引報告書及び預り証を受け取っており、これらの説明及び書面は、転換社債、株式投資等の経験、知識及び判断能力を有している者にとって、理解が困難ということはない。

この点、原告X2は、Dから受けた説明は、「ワラントは株式と似たようなもの」という程度であり、それ以上の説明はなかった旨主張し、甲B第三号証及び原告X2本人尋問の結果中にはこれに沿う部分がある。

しかしながら、原告X2の供述は、ワラント取引開始前に数回説明したとの証人Dの証言につき、具体的で詳細な言及をするものでない上、全般にあいまい、かつ、投げやりであり、真実を供述しようという誠実な供述態度が窺われず、真実が述べられているという迫力に欠け、吾人の心証に響かず、採用することができない。

そして、前記認定の原告X2の職業歴及び投資状況から考えると、原告X2がワラント取引についての前記説明及びワラント取引説明書により、ワラント取引の内容を理解していなかったとはいえない。

したがって、説明義務違反の主張は認められない。

(二) 断定的判断の提供について

原告X2は、被告担当者が「確実、儲かります。」などと述べたと主張し、甲B第三号証及び原告X2本人尋問の結果中には、これに沿う部分がある。

しかしながら、前記のとおり、原告X2のワラント取引開始時についての供述はあいまいであり、信用できないし、他に右事実を裏付ける的確な証拠はない。

したがって、断定的判断の提供の主張は認められない。

(三) 虚偽表示・誤導表示の使用について

原告X2は、Dが、ワラント取引勧誘に当たり「必ず、儲かります」、「株式のようなものです。」等と述べたと主張し、甲B第三号証及び原告X2本人尋問の結果中にはこれに沿う部分がある。

しかしながら、前記のとおり、この点についての原告X2の供述は信用できず、他にこれを認めるに足りる的確な証拠もないから、虚偽表示・誤導表示の使用の事実は認められない。

(四) 強引で執拗な勧誘について

原告X2は、Dが執拗な勧誘をしたと主張する。

しかしながら、原告X2自身、原告はDを信用しており、その勧誘する取引を断ったことがなかったと供述し、Dも、勧誘には直ぐに応じてもらえた旨供述しているのであって、強引で執拗な勧誘があったことを認めるに足りる証拠はない。

三  まとめ

以上のとおり、原告の不法行為についての主張は、いずれもこれを認めるに足りる的確かつ十分な証拠に欠け、認めることができない。

(裁判長裁判官 若林諒 裁判官 松井英隆 裁判官 森岡礼子)

〈以下省略〉

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